- 歯ぐきから血が出る
- 痛いというわけではないが、何かジーンと違和感がある
- 歯がグラグラする
- 口臭がする
- (強く)噛むと痛む
- 歯ぐきがやせて根っこが見える・しみる
など、これらは歯周病の一般的な症状の例です。
治療した人に比べて、治療せず放っておくと歯が抜ける確率が高いことは学術的に証明されています。
科学的根拠(エビデンス)にもとづいて治療を行うことで、歯周病を治していくことができます。

歯周病は放っておいて治ることはありません。
歯周病と指摘されたら…
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まず歯周検査を行います。
所要時間:30分〜1時間程度
歯周病の状態を調べます。通常はX線撮影も必要になります。
歯周病は一般的に大きく分けると、「歯肉炎」か「歯周炎」のどちらかになります。
- 歯肉炎は、プラークや歯石が溜まっているせいで歯ぐきが腫れているだけ、の状態です。
- 歯周炎は、プラークや歯石が溜まっているせいで歯ぐきが腫れているだけでなく、歯を支える骨も減っている状態です。
もちろん歯周炎の方がよくないのですが、どちらも早急に治療が必要です。放っておけば歯が抜ける原因となります。

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検査の結果から、推奨される治療を説明します。
所要時間:30分程度
歯周病に対する治療として
- 歯周基本治療のみ(歯肉炎や軽度の歯周炎)
- 歯周基本治療+歯周外科治療(中等度〜重度の歯周炎)
とがあります。
どちらの場合も、治療を完了するのにそれなりの期間が必要になるため、早期に開始することが推奨されます。

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歯周基本治療を行います。
所要時間:1回あたり30分〜1時間程度
歯肉炎の場合
- 所要通院回数:2回程度
- 治療期間:1ヶ月程度
衛生士によるスケーリング(見える範囲の歯石やプラークを取り除く)と口腔衛生指導(歯ブラシや歯間ブラシの使い方の確認など)が基本になります。
基本治療中に出血することがありますが歯ぐきが炎症によって傷んでいるサインです。
歯肉炎の場合はこれで歯周基本治療は終わり、後日、歯周検査(再評価)を行います。
歯周炎の場合
- 所要通院回数:3〜9回程度
- 治療期間:2ヶ月程度
歯周炎に対する歯周基本治療は、3〜9回程度の通院が必要(重症度や歯の本数によります)で、完了するのに2ヶ月程度はかかるとお考えください(早く治療が進められる場合もあります)。
重度の歯周炎の場合、治療の副作用として
- 知覚過敏(歯がしみる)
- 歯と歯の間に食べ物がつまりやすくなる
- 歯の根っこが露出して歯が長くなったように見える

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歯周検査(再評価)を行います。
所要時間:30分程度
歯肉炎や軽度の歯周炎の場合
多くはこれで治療が完了し、定期的なメインテナンスに移行いたします。
メインテナンスは軽度であっても必要で、その場合の頻度は4〜6ヶ月(めやす)とお考えください。

定期的なメインテナンスをされないとまた再発する可能性が高くなります。
中等度から重度の歯周炎の場合
引き続き、歯周外科治療が強く推奨されます。
これは歯周ポケットが深いために、歯周基本治療で取り除けなかった歯石やプラークを外科処置によって取り除く必要があるためです。(歯周ポケットが深い部分の歯石は基本治療だけでは完全に除去できないことは学術的に証明されています。)

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*中等度〜重度の歯周病で、歯周外科治療を行わない場合
そのまま定期的なメインテナンスへ移行することも可能ですが、原因となっているプラークや歯石が完全に除去できていないため、歯周病が悪化していくことを止めることは難しくなります。
この場合のメインテナンスはあくまで悪化するスピードをやや遅らせるだけです。将来的に歯が抜ける可能性も十分にあるとお考えください(とくに奥歯の場合)。
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歯周外科治療を行います(中等度〜重度の歯周炎の方のみ)。
①治療法:歯肉剥離掻爬術(フラップ手術)
(所要時間:1〜2時間程度)
- 治療回数:最大6カ所(歯の本数や部位によって分けて治療)
- 治療期間:2〜3ヶ月程度(必要治療回数によって変わります。)
歯ぐきを切開する治療のため「手術」と表現しますが、医科で行うような大手術ではありません。診療室で局所麻酔下で行いますので、長くても1回が2時間程度です。
外科処置のため、術後に痛みや腫れがでることはありますが、日常生活に支障がでることはまずありません。ほとんどの場合、治療後に普通に就業・食事などしていただけます。
治療の回数は、口の中全体に歯周炎が重度に広がっている場合は、4〜6回(最大6カ所・歯の本数や部位によって分けて治療いたします)の治療が必要になることがあります。その場合、治療が完了するのに2〜3ヶ月程度必要となります。
重度の歯周炎の場合、歯周外科治療の副作用として
- 知覚過敏(歯がしみる)
- 歯と歯の間に食べ物がつまりやすくなる
- 歯の根っこが露出して歯が長くなったように見える
といったことがまれに生じる場合があります。
②治療法:歯周組織再生治療
(所要時間:2時間程度)
より治療の効果を上げるため、歯周組織再生治療(自由診療)を行なったほうがいい場合もあります。
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歯周検査(外科治療後の再評価)を行います。
所要時間:30分程度
十分に歯ぐきの状態が改善したかどうかを確認いたします。
歯周外科治療によって歯石が十分に除去されて歯ぐきへの感染がほぼなくなった状態になっていますので、この状態を維持するために、定期的なメンテナンスが必要になります。
(深い歯周ポケットが残っている場合には、再度歯周外科治療を検討することもあります。)

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メインテナンスに移行します。
上記は目安であり、歯周外科治療を終えられた患者さんには、当分の間は1ヶ月ごとのメインテナンスが推奨されます。
その後の状態が安定していれば2〜3ヶ月ごとへと徐々に間隔をあけることも検討されます。

一度 歯周病になった患者さんは歯周病になりやすい傾向にあり、十分なメインテナンスを受けられない場合は高い頻度で歯周病が再発することが学術的に証明されています。

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抜歯について
特に重度の歯周炎の診断を受けた場合は、抜歯が必要となる場合があります。
ただその場合でも「どう考えても残せそうにない歯」と、「治療次第ではまだ残る可能性がある歯」とがあります。
「どう考えても残せそうにない歯」というのは、「根っこが割れている歯」であったり、「治療自体に耐えられず抜けてきてしまうと思われる歯」などです。
このような歯は十分な説明の上で抜歯することが強く推奨されます。よくご相談することをお勧めいたします。
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仮歯について
治療を始めた時にすでに歯や被せ物がなく、うまく噛めない状態である場合、前もって仮歯を用意した方が良い場合があります。(自由診療)
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かぶせものの治療について
かぶせ物の治療は、全ての歯周治療が終わり、歯ぐきの状態が安定してから行うことになります。
歯周炎が治っていないままかぶせ物をしても、近い将来に歯と一緒にかぶせたものが抜けてしまったり、噛んだ時に痛みが出たりするためです。

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インプラントの治療について
インプラント治療は、歯がない部分に人工の歯を作る治療です。
人工材料のためむし歯になる確率はゼロですが、インプラントが歯周病になることはありえます(インプラント周囲炎・インプラント周囲粘膜炎といいます)。
そのため、歯周病と診断されて、なおかつインプラントが必要な場合は、インプラントへの歯周病の感染を抑えるため、原則として歯周病の治療が終わってからになります。

「口の中の歯周病が治療されないままインプラント治療をすると、インプラントも歯周病にかかり、インプラントが抜けてしまう確率が上がる」ことは学術的に証明されています。
